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夏狂(なつぐるい)

 
 夏の西日がクーラーの壊れた僕の部屋を容赦なく灼き、汗が額から首筋へと流れ、シャツにシミを作る。なにか言葉を発したいのだけれど声を出したとたん彼女が消えてしまいそうでなにもいえない。
 そう、今、僕の前に一人の女の子が立っている。少女というより女の子という表現があっているように思う。ボーダーのハイソックスに三分丈のスパッツ、Tシャツ姿。僕よりも頭ふたつ分小さい背丈、スパッツの外に出してあるTシャツのせいもあるだろうが、ストンとしたウェスト、手足は関節の存在を感じさせないなだらかな曲線で構成されている。
 前髪をたらし、のこりを二つに分け、耳の少し上でプラスティックの玉のついたゴムひもでゆわえている。俗にいうツインテールの髪型が丸い顔によく似合っている。
 膨らみかけた第二期の胸の頂上のもう一つの膨らみがシャツにこの年頃の女の子特有の影を形作り、思いきり引き上げられたスパッツの縫い目が股間にくい込み、産毛さえ生えていないであろう幼い外性器の形をくっきりと浮かび上がらせている。
 僕を軽い目眩が襲った。
「暑いね」
「ああ、暑いね」
 僕らがこの部屋に来て初めてかわした言葉。
「エアコン、壊れてるんだ」
「そう」
「冷凍庫に、アイスがあるから食べていいよ」
「うん、あとで」
 また訪れる沈黙。
 アーモンド型の大きな目の瞳は窓から差し込む西日のオレンジ色に潤んでいる。
 膝の上に置いた僕の手を本の10センチ前に差し出せば、中指が彼女のまだ排泄にしか使用していないはずの性器に届く。そして、ほんの10センチ顔を前に出すだけで、微かな膨らみの先端に僕の唇が届く。
 僕の目眩は部屋の形を歪めるほどにひどくなった。
「名前、まだ、聞いてなかったね」
「磯崎杏奈」
 彼女は会釈をするように左胸の名札を僕の目の前に突き出した。
 ぽつっ。彼女の顎から僕の鼻の頭に汗がひと雫落ちた。それまで膝に張り付いていた僕の両手が弾け、杏奈の腰に絡み付いた。彼女は小さな悲鳴を上げたが、かまわず腕を絞り引き寄せ、左膝を彼女の股間に割り込ませ、覆いかぶさるように彼女を抱きしめた。杏奈の首筋から上がる甘ったるい汗の匂いが鼻腔をくすぐる。砂糖をたっぷりいれシナモンをほんの少しかけたミルクのような匂い。部屋の中が僕と杏奈を中心に渦巻き状に捩じれていく。
 後頭部から沸き上がった沸騰が脊髄を流れ下り、まどろんでいたもう一人の僕を叩き起こす。もう一人の僕は、下着の中で叩き起こされた怒りをぶつける相手を探して、うねうねと鎌首をもち上げた。
「い、痛い」
 杏奈の抗議の声に僕は腕の力を緩めた。杏奈は僕の首に腕をまわし、
「痛いのはいや」
と、いって目を伏せた。
 彼女の唇が柔らかくしっとりと僕の唇にかさなる。僅かに空いた隙間から舌を差し込む。口腔内への異物の侵入に驚いた彼女は身を堅くしたが、僕の舌はかまわず侵入をつづけ、先住の小さな軟体動物を探索する。口の中の最奥に堅く縮こまっていたそれは、初め、僕の舌先を用心深くつつき、敵意がない事を知ると、大胆に全体で絡み付いて来た。
 首を左右にふり、お互いの舌を上下左右に擦りあわせ、また、絡ませる。
「むふっ…んっむ…んんっ」
 舌を絡ませながら、杏奈が小さく呻く。彼女の唾液と僕の唾液が混じりあい、お互いの喉奥に嚥下される。
「んっ…んんっふ…んん」
 杏奈の舌は、飲食物を味わう器官から口腔快感を貪る生き物に変貌を遂げ、僕の舌と供に淫らな擦過音のデュエットを奏でた。
 杏奈が恐らくは無意識に腰を前後させはじめた。その律動に合わせ僕も左足のつま先をたて、細かく振動させる。
「ん…ん、んはぁっ」
 彼女の舌が僕の舌から唾液の糸を引きながら離れた。彼女の意志とは違う行動だったのだろう。すぐに、僕の舌を求めて唾液でぬめった短い触手を僕の舌に絡ませてようとして、僕の首を引き寄せようとする。
 が、僕は小さな軟体動物を迎え入れなかった。腰を抱いていた両手を真円に近い曲線に添わせすっぽりと包み、割り広げ、杏奈の外陰から肛門まで僕の大腿部にぴったりと接触させる。
 杏奈は少し恨めしそうに僕の顔を見上げたが、すぐに求淫行為を再開し、自らの体重と僕の脚の振動が生み出す快感に埋没しはじめた。
「んんんっ。う、う…あ、んん」
「う、ふうううっ、ん」
「ん…あ、んあ、あ」
 杏奈の腰は、前後にそして、左右に、また円を描くように律動する。時にはふるえるように、時には背伸びするように。
 スパッツに包まれた稚い陰唇が律動のたびにひしゃげ、歪んでいるのだろうか、きっとそうなのだろう。痺れ、思考能力が著しく低下した僕の脳が空想する。それがまた、僕の思考能力を低下させる。
「はあ、は…あ、あ、あ、んふううっ」
 杏奈の腰の律動が速度をあげ、ため息がちだった悦声が、女のそれに脱皮しはじめ、僕の首にまわされた腕がしまる。僕の脚に伝わる湿り気を帯びた熱は、彼女の感じている官能の大きさを顕わし、その印が僕のズボンにシミを作る。
 杏奈の快感証明書はしだいにその面積を広げ、同時に彼女の快楽を歌う声が大きくなる
「あ、あ、あふっ。はあっ…、はああああっ」
 杏奈は瀕死のげっ歯類のように僕を仰ぎ、潤んだ大きな瞳で何かを訴えかけた。言葉にはできない何か。
 彼女の背中に左手をまわし、のけぞらせる。右手をするりとシャツの中に潜り込ませ、お世辞にも乳房とは言えない左胸の膨らみに手を這わせる。
「ふっ…んんっ」
彼女が軽く震える。人さし指と中指の間に、思春期のしこりを軽く挟み、そっと、指の隙間を狭める。
「う、うんっ」
 彼女の体が弓なりになり大きくひきつった。
 シャツを捲り上げ、僕の指の間の狭い隙間で軽くしこり、盛り上がった乳暈の頂上を舌先で突く。
「ひゃっ、はああああっ」
 杏奈は再びひきつけ、のたうつ。
 僕の舌先はその場所で円を描き上に下に往復し右に左に行き来する。
「あ、あ、あ、あ、んああああっ」
 彼女の嬌声の高まりと同時に、乳暈に埋もれていた乳頭が数ミリだけ胸の標高を増す。
「は…ん、んんんっ。あっ、あっ」
 右胸の膨らみを全て含み込み、口腔内で乳暈をしゃぶり、乳頭を吸い出す。
「はあ、はあ、はあ」
「あっ、あん、あああん…、あああああん」
 杏奈は顔を上気させ、閉じる事を忘れた口角から一筋の口蜜を滴らせて僕を見下ろし、その半ば白痴化した大きな瞳には明らかに次を期待する鈍い光が宿っていた。
 僕の右手は、彼女が望んでいるであろう方向へ移動を開始する。正中線沿いに中指を下降させ、爪先でへその周りを三週してスパッツの縫い目を辿り、下腹部へ、そして、縫い目が潜り込んでいる谷間の入り口で移動をやめ、侵入を躊躇するように縫い目を上下になぞり、くすぐった。
 杏奈はわだかまる疼痒感に待ち切れなくなったのか、腰を前ににじり進める。僕の中指が杏奈の割れ目に飲み込まれた。
「んあああんっ」
 杏奈の熱く湿ったそこは、さらなる快楽の源の出現に、化学繊維越しにもかかわらず、ぬらぬらと僕の中指を濡らす。
「んっんっんっ、はああん。んああああっ」
 しだいに杏奈の腰がその律動を速めて行く。
「んっんあ、ああっ、ああああああ。」
 中指をまげ彼女の性器に潜り込んでいる縫い目をなぞる。微かな突起が指先にふれる。僕はその僅かな隆起を彼女の動きに合わせ擦り上げる。化繊から染み出したぬめりと、ぷりぷりとした感触。彼女の腰は、僕の中指に幼突器を嬲らせるようにあらゆる方向に素早く機動する。
「ひっ。ひあああああっ」
「あっあっああん」
「んああああああっ」
 杏奈は、来るべきその瞬間に向かって、腰の律動を速め、呼吸を荒げ、目を閉じ舌舐めずりをくり返す。
「はああああっ、はああん、ああああああああああっ」
 杏奈は手足を突っ張り、顎を反らせ、全身を硬直させた。そして何度かの痙攣の後、弛緩し、熱い迸りを僕の膝上に噴出さながら僕の胸に崩折れた。
 呼吸を整えようと、体全体で深呼吸をくり返す杏奈の股間から噴出し続ける奔流は、ズボンを貫通し、僕の脚を小川となって流れ落ち床に水たまりを作った。
 杏奈を首にぶら下げたまま後ろに倒れ、ベッドに仰臥する。彼女の体が僕の胸の上で軽く弾んで、湿ったマシュマロが再び僕の唇をふさいだ。
「んっ…んむふ」
 今度は彼女の小さな舌が侵入してくる。唇をかき分け、僕の舌を搦めとる。
「んんんっ、ふむっ…ん」
 杏奈は自分が失禁した事に気付いていなかったのか、また、知りながらも行為を中断させたくなかったからなのか、頭を振り、淫らな摩擦音をたてる。
「は…んむ、ふ…んん…」
「は…んはぁっ」
 僕は指先を僕の半分しかない背中にくすぐるように滑らせる。細かく痙攣しながら、杏奈は首にまわした両手に力を込め僕の口の中で肉質の器官を暴れさせた。
「あふ…、んんんっ」
 杏奈の背中を往復させていた右手の指先を背骨に添わせて下ろし、濡れ雑巾のように浸潤した化繊の布地に潜り込ませる。純粋排泄器官の筋肉の盛り上がりの中央、そこから、食物の成れの果てが出てくるときだけ拡がるすぼまりに、そっと中指を押し込む。座薬以外のものは受け入れていなかったであろうそこは、反射的につぼみ、侵入を拒絶した。
「ひっ」
 短く微かな悲鳴をあげ、彼女が口をはなす。
「あ…は…んんっ、そこっ、だめえっ。きたな…」
 杏奈の抗議を無視して中指を尻の割れ目に埋め込み、指の腹で菊皺の一本一本を確認するように擦った。
 彼女は小さな尻を打ち振り、肛門への刺激を拒否しようともがいたが、余計に僕の指を自身の排泄器の中に呼び入れる事となった。指先が柔らかな直腸粘膜に触れ杏奈の一番高い体温を計る。
「あひっ…、ひっ、ひいっ…」
「くうっ、うううっ…」
 僕の指を抜こうと、杏奈はめちゃくちゃに尻をふりまわしたが、異物侵入の不快感と排泄快感が入り交じった肛門官能が、回避機動を妖しい蠢きに変化させ、淫らな悦びを求める韻律運動を再開した。
「うふっ…、う…んむ」
「んあ、あ、んんっ、ん…くう、ううっ」
 杏奈は僕の胸にしがみつくように伏臥し、幼窄に数ミリつき刺さった中指を中心に腰を振る。
「あ…、あん。はあん」
 僕の鼠径部に大陰唇を押し付け、擦淫に耽っている彼女は、下半身を覆っている物が半ばその任務を放棄し、丸い柔らかな双丘から滑り落ちていることにも気付かず、日焼け跡がくっきりとついた尻を振り続けた。
「んんあっ、ああっ、ああああん」
 尺取り虫の前進動作に似たその動きは、彼女自身の幼蕾に愉悦をもたらすだけでなく、僕の下腹部に存在する忌わしい爬虫類の怒りを増長させる。僕はズボンの中で暴れ始めた僕の痛みに耐え切れなくなり、ファスナーを下げそれを引きずり出した。
 ズボンと下着の軛から解放された僕は、もはや完全に僕を支配し、彼女に割り入る時を待ちわび、びくびくと脈打ち透明な粘液を滲出させた。
 杏奈は突如出現した化け物に若干驚いたようだったが、それに対する恐怖よりも、好奇心と、これから行われる淫儀への期待が勝ったのか、唇を湿らせ微笑んだ。
 両足をスパッツから引き抜き、様々な体液で濡れそぼり下腹部に張り付いた下着を剥ぎ取り、Tシャツを脱がせる。
 僕の両脚を跨がせ座らせる。両手で尻を引き寄せ肉の割れ目を僕の根元に当てる。彼女は僕に向かってにじり寄り肉丘で僕を根元からなぎ倒す。彼女の肉の扉は僕で広げられ、内部の熱い粘膜と僕の充血の固まりが密着した。
「ふうっ…、ん」
 彼女の腰がぶるぶると痙攣し、新たに分泌された幼蜜が僕を濡らす。未発達な淫核が僕の裏側に刻まれた一筋ををなぞり上げ、敏感な頭部に向かってじわじわと這い上がってくる。
「ふっふっ、んう…」
 やがて杏奈の幼谷は僕の頭を被い、稚核が僕の粘膜のみで構成された頭部に到達して、体液吐出口と濃厚な接吻を始める。杏奈の小さな官能感知器管僕の粘液にまみれて首の付け根でワルツを躍る。
「あ…ああ…、うっん、んあ」
「あ、あ、あ、んあああああ」
 リズム感のない僕の腰部は、別の生き物のようにざわざわと震え、杏奈の歓びに連携する。
 彼女はさらなる快楽を求め、谷底の粘膜で僕を撫で擦る。快感を得るために律動し、沸き起こる快感が律動を反復させる。彼女の体液は涸れることなく湧き続け、僕から滲み出る粘液と混じりあい下腹部を濡れそぼつ。
「あっああっ、あっ」
「あっ…あん、ああっ、うあああ」
 僕と杏奈は淫悦の拡大再生産の螺旋に取り込まれ、互いの粘膜同士を摩り合わせあった。
 茜に染まった杏奈の体から吹き出す汗が、橙色の光線を乱反射し、僕の網膜を縫う。半開きになった彼女の口端から溢れた唾液は首筋に伝い乳首を濡らし、汗と区別がつかなくなって、僕の体に滴った。
 怒りの限界を迎えた僕は、二人の律動からぶるんと弾け、内性器への障壁が頼り無い粘膜だけになった彼女の肉峡に割り込もうとその先端を近付ける。
 快感の源が、凶悪な蛇に変身したことを悟った彼女が腰を浮かせかけたが僕の手がしっかりと彼女の尻を押さえ付け、逃がさなかった。
「い、痛くしないで」
 杏奈は僕に懇願しながら、僅かでも痛みが和らぐように自ら肉扉を広げ、僕の先端を膣口を防護する薄いひだのまん中にあてがった。
 僕は彼女の腰を少しづつ押し下げ臀部の筋肉に力を込め僕を押し出す。
「うっ…うう」
「いた…。っつ、あっ…。くうううっ」
 誰の侵入も許してこなかった杏奈のそこは僕を押し戻し、のけ反らせる。が、頼りないレースのカーテンはみりみりと徐々に突き破られて抗力を失い始め、遂にはぶちんと音をたてて裂けた。
「うあああああああああっ」
 初めて男に突入された衝撃に彼女は目を見開き、全身を戦慄かせる。まぎれもない処女の証が裂傷から僕を伝い陰嚢から雫となって、ベッドに鮮やかな花模様を染める。
「あ、あ、…っああっ」
 杏奈の膣内は狭く、僕の前進を妨げるように襞が纏わり付き締め上げ僕の吐出を促す。迫り来る放出快感に耐えながら、膣壁を押し広げ再奥を目指して僕は突き進む。
「ひっ…、ひっ…、あひっ」
「あひっ、ひぃっ」
 杏奈は口を大きく開き、舌を突き出してしゃくりあげた。
 半分ほどを彼女の稚拙な穴にようやく押し込み、僕の先端が子宮口にあたった時には、杏奈は放心し、手足の指先を微かに痙攣させるだけで、糸が切れた操り人形のように弛緩し、瞳孔が最大に開いていた。
 僕は意識を失った杏奈を抱きしめ、最前よりは締め付けが緩くなった膣内を抽送させ、ガツガツと一番奥の硬い扉に僕を叩きつける。
 かくんかくんと手足がそよぎ、一杯に広がった性器から潤滑液が漏れだし、泡立った。
「あ!?、あ!、あああっ。あああああっ」
 彼女の覚醒と同時に僕への締め付けが蘇った。杏奈のこりこりした内部生殖器が僕を嬲り、完成されていない襞が密着して絞り上げる。
「ひっ、ひっ…いっ、んひっ…。ひ…ん、ひい…ん」
「ひ…あ、あ、あひぃん。ん…あ、あ、あっ」
 彼女の淫声は明らかに陶酔を帯び始め、僕の肩に手を掛け、半ば立ち上がり、そして沈み、自発的に幼性器を律動し始めた。
 膣奥のしこりは、円を描くように僕の先端を玩び、内性器全部が僕を捩り伐ろうと締まり、膣口が僕を絞りながら上下する。
「あ、あ、あ…、ああっ、あああっ!」
「んあああああああああああ!!」
 杏奈の絶叫が僕を貫いた。
 同時に腰が弾け、杏奈の子宮内に全てを吐き出そうと僕が杏奈の中で激しく痙攣する。
 杏奈の幼い子宮は大量の白濁粘液を溜切れず、僕が突き刺さった裂唇から断続的に種液を噴き出した。
 夕暮れのそよ風が僕の背中を愛撫していた。
「はあ、はあ、あ、アイス食べたいな」
 杏奈が苦しい呼吸の中で喘ぐ。
 いつまで果てるとも知れない恍惚の戦慄きの中で、僕の痺れた脳髄は歌を歌い始めた。ずっと昔に口ずさんでいた童謡を。
 僕は杏奈を串刺しにしたまま歌を歌い続けた。